Ⅰ-5、RIMCL100住宅、適応地域の可能性メインイメージ
2007.12.12
Ⅰ-5、RIMCL100住宅、適応地域の可能性

これまで”RIMCL-100"住宅の外壁をモデルに、各部分の空気変化を空気線図でビジュアル化し、その結露に対する安全性を検証してまいりました。この検証は、湘南地域に位置する実際の建物から温湿度をサンプリングした経緯から、”湘南地域における安全断熱構造”と発表させていただきました。しかし、湘南地域、或いはこの地域に準じた気候特性を持つ地域に有効なだけでは納得をいただけないものと考えています。そもそもの住宅断熱は、冬の暖房費がかさむ寒冷地域において必須なアイテムとして普及してまいりました。又、現代の住宅においても、この断熱を無くしてはその生活が成立しません。RIMCL-100技術が追求する”我が国における地球温暖化に貢献する住宅”という非常に重要なテーマ性を考慮しますと、この寒冷地域においての有効性も確認しなければならないと思います。実証については、今後の作業に任せる事とし、とりあえず、手持ちのデータ等から類推しての検証をしてみます。

(1) “RIMCL-100”住宅 その安全性の限界

湘南地域においての、”RIMCL-100”断熱構造の結露に対する安全性は確認?された事と思いますが、次に、その安全性の限界値を再び空気線図を使って検証してみたいと思います。

イ.各部分の空気温度の比較

A群:外気、B群:屋内空気とC群:壁中空気のそれぞれの温度データをもとにその関連性を比較、検討します。ここでサンプリングされる各部分温度は、空気に与える周辺環境が安定する夕方7:00~翌朝6:00までの11時間にかけてのデータとします。又、温湿度については、B群:屋内空気の湿度が変化の基準となりますので、この検討では35%と固定して考えます。

空気線図に表されている各部分の空気の温度、及びそれぞれの空気の間に介在する断熱材等の影響を温度差として表に表します。この表から、外気温度と壁中温度の差は平均6.9℃、壁中温度と屋内温度の差は平均7.7℃と読み取れます。ここで、表中の温度を平均温度差に補正します。

① 屋内-壁中温度差=7.7℃   ② 壁中-外気温度差=6.9℃

Photo

ロ.空気線図からRIMCL-100住宅の安全性限界域を推測します。

下図に示される空気線図から、B群の屋内空気の形とC群の壁中空気の形が相似形で、水蒸気量が変化しない移動をしている事がお解かりになると思います。そして、B群の屋内空気がA群の外気に影響され、C群の壁中空気に変化した過程が読み取れる事とおもいます。尚、B群の屋内空気環境は、”RIMCL-100”住宅における平均的なものを表しています。

Kuukisenz5

さて、安全性の確認方法は、C群の壁中空気の変化を予測して見極めます。”RIMCL-100”住宅においての外壁における結露域は、このC群の空気が触れる熱反射断熱材の表面に現れます。従って、この空気の結露域を確認すれば良い事になります。

・ RIMCL-100温熱環境特性を空気線図を使って説明

ここでは、イ.の温度表からそれぞれの空気の最低温度を使ってご説明いたします。

イ.で算出した温度差をそれぞれの平均値に補正し、空気線図上に示す①=7.7℃ ②=6.9℃とします。

C:壁中空気は、外気とB:屋内空気の双方に影響されて変化します。その影響の割合は、空気線図に示す①:②の割合になります。

つまり、B:屋内空気の温度16.5℃からA:外気温度1.9℃を差し引いた14.6℃を全体の変化として、その変化の割合をC:壁中空気の両側で 、温度表から①:②=7.7/14.6 : 6.9/14.6 とします。

この割合は、断熱材と温床による蓄熱加温が影響する”RIMCL-100”における、温熱環境創造特性からのもので、B群空気の湿度と外気温度降下の度合いが変わらなければ(一定ならば)ほぼ一定とお考え下さい。

Rimclgenkai_2

・限界域の確認、検証

下図の空気線図上において、C群の空気の形状をそのままに左方向へ平行移動します。ここで、Cの空気が飽和線に触れた時点の空気をC’(C群の最低温度8.8℃が1.2℃になる状況)とします。従って、この空気はこの時点で結露現象を起こしますので、この温度を安全限界温度と仮定します。この温度はC’=1.2℃となります。

ここから、Cの温度降下の差を計算しますと、8.8℃ー1.2℃=7.6℃ となります。

C’の温度が1.2℃になった時の、A’:外気温度は、1.9℃ー7.6℃=-5.7℃となります。

従ってA’の温度がー5.7℃、C’の温度が1.2℃から、C’-A’=6.9℃となり、(C-A):(B-C)=6.9:7.7 の関係式より、B’-C’=7.7となります。ここからB’の温度は7.7℃+1.2℃=8.9℃と算定されます。

A’:外気の最低温度が、-5.7℃となった場合、C’:壁内空気の最低温度は1.2℃となり、断熱材表面で結露が発生し始めます。この時のB’:屋内空気(湿度35%一定)の最低温度は8.9℃となります。

従って、RIMCL-100住宅では、早朝の最低空気環境が35%以上、又は8.9℃以下になる気候下での生活では、壁内で結露が発生し始めると考えて間違いないように思います。

但し、RIMCL-100の屋内温熱環境は、35%~40% 16.5℃~23℃を目安としていますので、この空気環境を保つ限り躯体内結露は発生しない事がこれまでの説明で推測できる事と思います。そして、その空気環境を保つ方法の一つが、温床運転時間による蓄熱量の加減操作です。

Rimclgenkai1_2

結論として、”RIMCL-100”住宅においては温床を1日40分、2回運転する通常生活で、冬季の最低外気温度が-5℃程度(計算例ではー5.7℃)の地域において、その躯体内結露に対する安全性が推察できます。

但し、この時の屋内環境は夕方7:00で14.1℃、よく早朝6:00で8.9℃というような劣悪なものとなりますので、現実の生活では温床運転による加温をします。そして、RIMCL-100住宅の標準屋内環境、35~40%、16.5℃~23℃を保持しますので、寒冷地においてもその断熱構造に対する安全性はご推察願えるのではないかと思います。

(2) “RIMCL-100”住宅、寒冷地における安全適応の模索

湘南地域に位置する”RIMCL-100”住宅は無結露住宅である事が、1.安全性の検証の段でご確認いただいた事と思います。その結果をここでもう一度確認しておきたいと思います。

  ① 温暖化対策住宅として貢献できる”RIMCL-100”住宅の基本性能

     屋内空気環境条件:夕方19:00~翌朝6:00までの11時間での変化

         温床運転  朝5:00から40分、夕17:00から40分

         湿度:ほぼ35%で一定   室温:最高23℃、最低16.5℃

     この屋内環境を保持する状態での結露の可能性の検証結果。

        外気温2.2℃の時、無結露が検証されました。

  ② 湘南地域仕様”RIMCL-100”住宅の安全外気温度限界域

        外気温-5℃が無結露限界温度域となる事の確認がされました。

     この時の屋内空気環境:夕方19:00=翌朝6:00までの11時間での変化

         温床運転 朝5:00から40分、夕17:00から40分

         湿度:ほぼ60%で一定  室温:最高15.3℃、最低8.8℃

以上のような検証結果から、湘南地域仕様”RIMCL-100”住宅の適応可能な地域は、とりあえず外気温度が-5℃までの地域であることが判りましたが、この外気条件下での屋内温熱環境は世辞にも快適な状況とはいえません。又、外気温度にしても、せめて-15℃程度にまで耐えられる性能を確保しなければならないと考えます。

そこで、この状況を改善する方法がいくつか考えられます。その方法をこの後の項で検討してみたいと思います。

 イ.”RIMCL-100”住宅の基本断熱性能を熱貫流率で確認

 ① 外壁の熱貫流率

下図に、”RIMCL-100”住宅の外壁断熱構造の断面図を示しますが、図を基にこの外壁の熱貫流率を計算します。

外壁の熱貫流率は下表の計算により、0.25 となります。

参考としてこの値は、旧公庫基準であったⅠ地域(北海道)における次世代型の省エネルギー住宅の外壁の熱貫流率 0.35 と比較してもそれを上回っている事がわかります。

Netkannryuuritukabe1_4

Netkannryuuritukabe

②開口部の熱貫流率

”RIMCL-100”で採用する各開口部材別の熱貫流率の参考値です。湘南地域仕様ではアルミ製ペアーガラスサッシを標準装備とします。

    参考(アルミ製シングルガラス:6.6

   ・アルミ製ペアーガラスサッシ:3.8 

   ・樹脂製ペアーガラスサッシ:2.9

   ・木製ペアーガラスサッシ:2.7

   ・木製トリプルガラスサッシ:1.8

ロ.温床運転時間拡大による屋内温熱環境の改善

外気温度が想定温度より下がった時、壁内空気を結露域に到達させない為の最も簡単な方法に屋内温度を上げる(結果的には換気作用にもなります)方法があります。

1-ロの項で、屋内温度15.3℃が11時間後、-5.7℃の外気に影響され8.9℃まで下がった場合、壁内温度が1.2℃となり結露が発生する状況となる事を説明しました。この状況の時、温床の運転時間を増やすことで屋内空気の温度を上げます。と同時に壁内温度も上昇しますので結露の発生を回避できる事になります。

下図の空気線図は、この時の状況の変化を表しています。B’:8.9℃の屋内空気に8.6℃の加温をする事で、B”:16.5℃の空気環境を創ります。外気温度はそのままの-5.7℃とすると、B”:屋内温度との温度差は23.2℃となります。この温度差を(①=C”-A’):(②=B”-C”)=6.9:7.7に分割しますと、C”:壁内温度は5.7℃となりC”群の空気は、空気線図上に示される位置関係となります。この空気群は、屋内空気への加温により飽和線より離れる事と、おおよそ湿度70%の空気に変化する事で結露しないことがわかります。

加温は他の手段で行う事も考えられますが、その場合は、”RIMCL-100”で創られる温熱環境特性が適用できませんので別の方法で検証することをおすすめします。

Rimclgenkai2

結論は、簡明に申しますと、実際の生活において屋内温度を下げなければ良い事になります。

エアコンストーブでの暖房では、1日中、運転を継続する必要があります。又、ストーブによる暖房の場合は燃焼と共に水蒸気が発生する為換気が必要です。

温床(蓄熱式床暖房)の場合は間歇運転をします。例えば、1時間運転、4時間停止というように、地域の外気温度に合わせた運転方式を採用すれば良い事になります。

ハ.結露域となる熱反射断熱材の屋内側空気の温度を上げる

壁内には、石膏ボード等内装下地材、仕上げ材等により断熱、遮蔽されて屋内空気が伝わります。これがもし、窓等開口部と同じように直接屋内空気に触れたら、対流により効率の良い加温(換気)がなされる事になります。

下図の空気線図において、赤B群は屋内空気、茶E群は壁中空気、黄D群はガラス表面空気です。熱抵抗の大きい外壁より、熱抵抗の小さいガラス表面空気の方が良い温熱環境を維持しています。ここから単純に、熱反射材を屋内空気に露出させれば、ガラス表面と同じ環境になると考える事もできるわけです。

Kuukisenz13

以上の考え方から下記の二つの対処に有効性が見出されますとなります。

  ・外壁の下部と上部に通気口を設ける事でスムースな対流を可能にさせる

  ・温床設備を外壁内の下部に届くよう配置する

ニ.断熱構造を強化する事で建物の熱損失を減らす

”RIMCL-100”技術をベースに断熱抵抗が増す工夫をします。

   ・内装仕上げ材に漆喰等を採用する

   ・開口部に木製二重ガラスサッシや木製三重ガラスサッシを採用する

   ・熱反射断熱材の屋外側に他の断熱材を併用する

   ・その他(研究開発中)

以上、さほどの費用もかけずに誰でもが簡単にできる処置方法を挙げてみましたが、その安全性への効果のほどは実地に生活建物にその対策を施し、そこからのデータを検証、確認する事で明白にしたいと考えています。

さて、これまで”RIMCL-100”住宅について、長々とその住宅の意義、技術の根拠等を申し述べてまいりましたが、一番大事な安全性について述べ終わったところで終了したいと思います。間違った記述等ありましたら、私の未熟の至りという事でお許しを願いたいと思います。長い間ありがとうございました。

この記事のカテゴリ:温暖化対策住宅
 © 2021 danhouse co., ltd.
湘南地域のリフォーム・注文住宅は一級建築士事務所 ダンハウス株式会社
建設業登録 神奈川県知事許可 般~23 44283