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2007.12.19
Ⅴ-1、無結露住宅―結露の基本メカニズム

冬季、住宅で起こる結露に窓ガラスの表面結露があります。何故起こるのかという事は、”空気が冷たい物に触れると結露する”という理解の仕方で皆が知っています。その結露水の始末はというと、"拭いて乾かせば良い”という事も知っています。

しかし、断熱材を使用する以前(断熱住宅での壁表面結露は別の原因も含む?)によく見られた、住宅の壁と天井のコーナー部分のカビや結露の発生となると、明快に説明できる人は少ないのではないかと思います。

実は、それぞれの結露の発生のメカニズムは同じものなのです。壁の結露は、結露水をその下地材に含んでしまうので見え難いだけなのです。そして、その水分と、カビの発生しやすい屋内空気の適度の温度が重なってカビになるのです。

さて、ここで、一般的に起こるものも含めて結露の基本的なメカニズムを知っていただきたいと思います。一般的には、建物の断熱の性能やその効果を表す時に、R値とか熱伝導率とかの数値で説明されます。これらの数値は複雑な?計算を経て数値化された数字を指標としています。しかし、これでは、説明する側も、される側も、実はよくわからないというのが実情に思います。従って、ここでは、どのような状況になったら結露が起きるのかを図表を使って説明したいと思います。使用する図表は、空調システムや冷凍機の設計などで使われている"空気線図(NC線図)”というものです。

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上図で、Aの空気(24℃、40%)を、例えば就寝前の部屋の状態空気だったとします(この時の外気の最低温度は0℃とします)。その部屋の空気が、外気によって冷やされ、まず窓ガラスの室内表面温度が外気に影響されて、Bの(9.2℃=Aの空気の露点温度)温度まで下がったとします。この時点でまずガラス表面が曇り始めます、その後、室内の暖かい空気とガラス表面の冷やされた空気(躯体からの熱損失もあります)が対流により混合されながらその状態を保ちます。その後、外気の温度が更に下がり、窓ガラス表面温度がBの温度を保てなくなった時点で、ガラス表面に結露水が流れ始めます。BからCの温度(4℃)までの移動の途中、空気の性質は飽和線上を移動します。このBからCへ空気の性質の移動に伴うものが現象として現れる結露水という事になります。

その結露水の量は、部屋の体積(空気量)xAの比容積x水蒸気量の差になります。

部屋の体積を、例えば10畳とすると、16.5㎡x2.4=約40m3となります。24℃、40%の空気の保有する水蒸気の量は図から0.0076kg/kg(DA)と読め、4℃、100%の空気の水蒸気量は同じく0.0050と読めます。この数値を元に結露水の量を計算で確認してみます。但し、空気の比容積はその空気の温度、湿度で異なりますので、その数値は線図から読みとります。

計算例   

    ① 24℃、40%の空気に含まれる水分量 

        40m3x 1/0.852m3/kg(DA)x 0.0076kg/kg(DA)

                   =40×0.0076 /0.852      m3・kg・kg(DA)/m3・kg(DA)

                   =0.3568kg   

    ② 4℃、100%の空気に含まれる水分量

        40m3x 1/0.791m3/kg(DA)x 0.0050kg/kg(DA)

                   =40×0.0050 /0.0791

                   =0.2528kg

           ①-②=0.3568-0.2528=0.104kg=104g

つまり、10畳の部屋で、その空気が24℃、40%あったものが翌早朝に4℃まで下がった場合、その発生する結露水の量は104g(104CC)ということになります。これが、窓ガラス表面で発生する場合は拭き取ればよいのですが、建物躯体の中(壁内、床下、天井裏等)で連続発生した時は、大きな事故につながる可能性があります。

線図および計算結果から想定しますと、建物屋内で結露水を生じさせないためには、以下の2つの方法が考えられます。

 ① 部屋の湿度をB点(100%)の手前に抑える=除湿をする

                               =換気をする

 ② 部屋の温度を露点温度まで下げない=暖房器を間歇運転し続ける

                            =躯体や開口部を断熱する                

                =容量の大きい蓄熱タイプの暖房方式を採用する

冬季、住宅内で発生する結露にはそのほかに、水廻りで発生するもの、天井裏、床下や北側押入れ内で発生するもの、基礎内で発生するもの、建物の構造内部で発生するもの等々たくさんあります。そして、その発生のメカニズムはシンプルなものなのですが、住宅という建物の性質上、その結露の発生過程及び対処には、非常に複雑な要素がからみ一律に扱えない現実があります。

住宅断熱の導入初期では、目に見える壁の表面結露等がなくなり、屋内の暖かさと相まってその効果のほどに目を見張ったものでしたが、時間を経ると共にその扱いの難しさを知らされるようになりました。只今では、導入初期のような重大事故はさすがに減ってきたようですが、それでも未だにより良い対処工法の出現が待たれていることも現実です。

もう一つ忘れがちな事は、夏における結露の問題です。通常、一般住宅では起こりにくい現象ですが、温暖化によって気温が上昇した場合(現在国内で40℃以上の記録がでています)、夏においても住宅内部で結露が発生する恐れが出てくるという事です。線図を見ますと、同じ湿度40%の空気でも、24℃の時の露点温度は9.2℃でが、40℃の時の露点温度は23.7℃と変化します。保有水量は同じく、0.0076が0.0188と増え約2.5倍にもなってしまいます。このように空気は、温度が高くなると露点温度も高くなり、その結露水の量も増える性質をもっています。もし、この外気に、40℃、70%の性質をもつ空気が現れたと仮定した場合、その空気の持つ露天温度は33.7℃となります。現在の冷房推奨温度は28℃ほどなので、もし、このような外気環境が出現した場合、住宅の内部は圧倒的な外気の水分量によって結露水に見舞われことになります。

冬の省エネルギーを策した住宅断熱ですが、未だにその技術の安全性は担保できず、むしろ、我が国の住宅の耐久性向上においてその阻害要因の一つともなってしまった感があります。国では(建築基準法)24時間換気を規定し、一方、民間住宅業界では益々高気密化に拍車をかけているというこの矛盾。又、夏においては、気密断熱化された躯体が日射熱を閉じ込め、蓄熱体に変貌してしまう可能性も考えられ、その通年での有効性に疑問も出てきました。そして更に、将来的な夏の気候変動を加味した場合、冬の結露事故をはるかに凌ぐ結露事故の発生も予測できます。折から、地球温暖化抑制が国際的な重要なテーマとなり、我が国においても産業各分野、生活においてCO2の発生削減が急務となっています。我が国の住宅においても、生産、生活を通した、目先の省エネルギーではない、本質的な意味においての省エネルギーな住宅を考えなければいけない時期にきているのではないかと思います。

この記事のカテゴリ:温暖化対策住宅
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