27年ほど以前に建築した私の自宅には、当時まだ余り馴染みの薄かった、北欧製木製二重ガラスサッシを装備しました。構造は2×6工法を採用、勿論、温床(蓄熱式床暖房)も装備された事は言うまでもありません。
この当時は、躯体内結露などという現象も知らず、ただただ冬が暖かく窓ガラスの結露のない自宅の住みやすさに満足していた事を思い出します。
その経験をもとに、暖かく住み易い住宅をモットーに、1987年にダンハウス㈱を設立したしました。当初採用した断熱サッシは、北米製の木製二重ガラスサッシでした。その後住性能の向上を目指し1991年からは、北欧製木製三重ガラスサッシを採用、現在に至っております。
その性能のバロメーターは、温床(蓄熱式床暖房)の運転時間でした。、温床によって作り出される丁度いい?屋内温熱環境が、どのくらいの時間運転したら得られるかで判断したのです。
勿論、断熱性能はサッシの構造だけでなく、断熱材の種類や厚さ、躯体や内装材も含めた断熱構造等様々な要因が影響してきます。従って、それらの一つ一つを検討していく中で、全てのバロメーターとなったのが温床の運転時間でした。
当初の北米製二重ガラスサッシを採用していた頃は、1日3時間運転で23℃~16.5℃程度の屋内環境でした。北欧製三重ガラスを採用する頃には他の要因も手伝って、1日1時間~2時間運転で23℃~20℃の屋内環境を得られるようになりました。場合によっては、運転しない日でも1日中20℃フラットの屋内環境を保てるほどになりました。
20年に上る技術開発の成果として、ダンシステムを採用した住宅は、その屋内温熱環境は屋内温・湿度が20℃フラット、40%フラットが実現したのです。従って、壁の中の温度が下がり湿度が上がったとしても、その空気は室内空気との対流により結露し得ない空気の性質を保ちます。実測地域の最低外気温が0℃という地域での事ですが、この事は”無結露住宅”を証明するのに充分なものだと考えています。
ダンシステムの装備された住宅における冬季の1日の屋内温・湿度データーです。
RIMCL100住宅においては、アルミ又は樹脂製二重ガラスサッシを標準装備
ダンシステムによる住宅は、結露を克服し、最高の温熱環境を創出し、これ以上望むべくもない地点まで到達してしまいました。しかし、建築コストが割高、工期が比較的長く掛かるというような事情から、その普及がままならないという問題を抱えておりました。折も折、2年ほど前になりますか、地球温暖化問題が深刻な状況になりつつある事を知り、生活おいても省エネルギー化によるCO2の削減が求められいる事を知りました。
RIMCL100の設計思想は、その社会的背景から突然生まれました。
冬季の早朝の屋内温度が20℃ある必要はない、17℃でもいいではないか。
建物の設備や内外装の意匠は贅沢に飾り立てる必要などないではないか。
耐久性をあげて、可変性を持たせると、壁やドアーなんか必要最低限でよい。
ここまで開き直った結果、RIMCL100住宅における開口部の断熱サッシは、今までの木製三重ガラスサッシからアルミ又は樹脂製二重ガラスサッシを採用するに至りました。その結果、建築価格も大幅に抑えられ、これからの普及に希望が持てるようになりました。
そしてこの仕様の変更には、実はもう一つの理由があります。27年前、私の自宅建設にあたり木製サッシを採用した事は既にご承知の事と思います。27年前は若かったので気にもなりませんでしたが、最近、窓の開け閉めが苦痛になってきたのです。ハンドルや金物が痛み、木部が腐食をみせるようになりました。ペアーガラスの中のドライ空気に湿気が入り込み結露するようにもなりました。窓を取り替えるのには、相当な費用が発生します。部品はとうに手に入りません。
瓢箪から駒のようですが、結果として、ダンシステムを多くの方に利用していただくことを考えると、今までの木製三重ガラスへの執着が何だったのかと反省する只今の心境です。