(1) 開放構造に向かったダンシステム
一般的な断熱住宅では、結露事故を防ぐ為に、ベイパーバリヤーとしてポリフィルムを採用し躯体の密閉構造化に向かいました。そして、この時点では、あくまで密閉された屋内の空気を換気する目的で、計画換気等の設備が装備されていました。
一方、ダンシステムの装備された住宅では、建物各部位に施された断熱材の外側に外気を取り入れる(土間床工法を採用した場合の床下は別)事で、躯体内部で発生する湿気を通気層に逃し、屋内から浸入する湿気を逃す方法を採用しました。
なぜかと申しますと、我が国の気候は、夏でも、冬でも、湿度がおおむね20%~100%の間で推移しているという事実があるからです。自然の結露現象である、露が降り、霞やモヤが建物にかかります。建物が、1年の中で季節を問わず、何度も湿気に晒されるのです。それ故、我が国のかつての建物には、張りだした軒があり、開口部上部には霧除けと言われる小さな屋根?がついていたのです。その上、柱や梁の構造体は、密閉されることなく屋内外にさらされていました。私の妻の実家も大正時代初期の建物ですが、関東大震災を経験し、未だに立派に住いの用をたしています。構造躯体を外気に晒すことがいかに木造の建物にとって有効化を物語っています。
外壁通気層に加えても一つ工夫がありました。石膏ボードと構造用合板に塞がれた、壁の中に発生した湿気をスムーズに逃す為の工夫です。つまり、構造用合板に湿気を抜く為の6mm程度の穴を設けることでした。この穴から壁内の湿気を、少ない滞留時間で通気層に逃すことになりました。又、この穴には、結露状況に陥った空気が発生した場合、外気が対流する事で結露を防ぐ機能もあります。
併せて、ベイパーバリヤー(実は不必要?)にアルクラフト紙(防湿機能に加えて輻射熱を反射する性能を併せ持つ)を採用しました。このシートは、アルミ箔にクラフト紙を蒸着させたもので、クラフト紙が壁内の湿気を吸着し、アルミ箔が生活熱を屋内に反射し、日射による輻射熱を屋外(通気層)に反射する機能を持っています。
15年ほど前、この時点で、会社創設当初の目標の一つであった安全断熱工法にたどり着きました。開口部には木製3重ガラスサッシを標準装備し、屋内の温熱性能も飛躍的に向上、この上望むべくもない住宅に成長しました。しかし、100年の耐久性ということに関しては、実績のない2×6工法を採用している事もあり、又、かつての真壁構造の住宅と比べても、構造部材の開放度という点では今一つ納得できないものもありました。
そして、1999年にSE構法を知りここから一気に、基本構造を在来(SE構造)工法に転向しました。この構造にダンシステムを装備、100年住宅の実現が射程距離に入ってまいりました。
その後2005年に熱反射断熱シートに出会い、念願であった安全断熱・高耐久住宅の実現を確信する事になりました。基本構造にもSE構造と併せて、在来軸組工法を採用、熱反射断熱シートの特性を生かした、真壁構造を持つ安全断熱住宅が誕生しました。